読書のとき、本に線を引いたほうがいいかどうか、悩んだことはありませんか?
「線引き読書」を経験し、現在は「ふせん読書」派になった筆者が、線引き読書の感想を紹介します。
筆者が試した線引き読書の方法・感想
筆者が試した線引き読書の方法は以下の2つでした。
パターン1 3色ボールペンを活用
パターン2 普通に線を引く→抜書きをする
それぞれ、方法と感想を紹介します。
3色ボールペンを活用
「3色ボールペン活用」の方法
赤・青・緑の3色のボールペンで線を引きながら読書をする方法です。
赤→その本の核心になるところ
青→赤の部分ほどではないが、大事だと思われるところ
緑→自分がおもしろいと思うところ
この方法は、TV等でも有名な文学部教授の齋藤孝先生の著書、「三色ボールペンで読む日本語」や「読書力」などで紹介されています。
私は自分が線を引くときには、三色ボールペンで色分けして引いている。青と赤が客観的な要約で、緑が主観的に「おもしろい」と思ったところだ。青は、「まあ大事」という程度のところに引き、赤は、本の主旨からして「すごく大事」だと考えるところに引く。
「読書力」 齋藤孝 2002年 岩波書店
「3色ボールペン活用」のメリット
3色ボールペンで線引き読書をするメリットは、なぜ自分がそこに線を引いたかという理由を、色を見ただけで判別できることです。
ペンの色 | 内容 |
赤 | 客観的にみて、すごく大事な内容 |
青 | 客観的にみて、まあまあ大事な内容 |
ペンの色 | 内容 |
赤または青 | 客観的にみて大事な内容 |
緑 | 主観的におもしろいと思った内容 |
特に、緑色を使うことが筆者にとっては便利でした。
読書では本の主旨を把握することが大切です。しかし、自分の感情で「なんだか気になる」と思う箇所に線を引いたら、本の主旨と混ぜこぜになってしまいます。
ですが、緑色の線を使うことで、自分が気になる箇所を区別して残せるのです。自分の心情を切り捨てなくてもよいと思うと、ちょっと安心しませんか?
「この意見は自分と違って納得いかないな」「正直意味はよくわからないけど、気になる言葉だな」といった、宙に浮いているフレーズも、宙にういたまま残せばいいのです。
後で緑色の線を見返したとき、かつて自分が疑問に思ったことに対して、新しい発見や解決法が思い浮かぶかもしれません。
「3色ボールペン活用」のデメリット
3色ボールペンを使うデメリットは、「線を引いただけで安心してしまう」ということです。
3色ボールペンで線を引くには、ある程度の判断力が必要とされます。核心になる重要部分なのか(赤)、まあまあ重要なのか(青)を区別するのにもエネルギーを要します。
そうして本を読み切ったときは達成感がありますが、その分気が抜けてしまうともいえます。
結果として、線を引いたところがなかなか覚えられません。
もう一度その本を開けば、引いた線を手がかりにその本のエッセンスに触れられます。ただ筆者は、線を引いたことで「やり切った」感を持ってしまい、なかなか再読する気になりませんでした。
3色ボールペンを活用するのであれば、線を引くだけでなく、何かの形で読書メモを残すほうがよいと思います。
「読書メモも時間がかかるから困る」という人は、3色ボールペンの線引きより、読書メモ作りを優先するほうがいいかもしれません。
普通に線を引く→抜書きをする
「3色ボールペン活用」とは違い、普通のペンだけ使う方法です。
①気になったところに普通のペンで線を引き、そのページの角を折る(ドッグイヤー)
②線の部分を見返し、残しておきたいフレーズをPCでメモに打ち込む
参考にしたのは、コンサルティング会社のCEO、ビジネス本の執筆など多方面で活躍する本田直之さんの「レバレッジ・リーディング」です。
この本は、読書=投資という観点をもとに書かれた本です。投資からより多くのリターンを得るための読書の手順が紹介されています。
その仕上げの部分にあたるプロセスが、線を引いた部分の抜き書きです。
わたしは線を引いた部分をパソコンに打ち込んで、メモを作ります。このメモはさまざまな本の中で自分にとって重要なポイントを集めた、いわば「究極の本」のようなものです。
「レバレッジ・リーディング」本田直之 2006年 東洋経済新報社
このメモは持ち歩いて読み返せるように作るものであり、持ち歩ける形にできるならどのような方法で作ってもよいそうです。
本田さんはパソコンで入力した後、A4判コピー用紙にプリントをしています。
「普通に線を引く→抜書き」のメリット
内容の意味合いを判断しながら、線の色を変える「3色ボールペン」よりも、気軽に線を引けます。
判断に迷って読むのに時間がかかり過ぎることがありません。
また、自分に役立つ箇所は抜書きをしたメモに残っているので、本自体は処分することができます。本棚に本が入り切らなくなるということが防げます。
「普通に線を引く→抜書き」のデメリット
最もハードルとなるのが、習慣化しないと抜書きをする時間をなかなか作れないことです。
抜書きはPCで打ち込むほうが早いのですが、PCを立ち上げるのは慣れていないと面倒です。その結果、読み終わって抜書きをしなければと思いながら放置されている本が発生しました。
また、抜書きした後の本を処分する方法が「捨てる」しかないということです。
最初の頃は躊躇なく資源ゴミに出していましたが、家族に見られると「えっ、捨てちゃうの?もったいない」と言われるので気まずいです。
古本買取に出せばいくらかでもキャッシュバックがありますが、捨てる場合はゼロ。
最悪なのは、線だけ引いて抜書きができないまま溜まった本を、スペースの関係で捨てるしかない場合です。本を買って何も得られないまま、お金を無駄にしたという罪悪感が募ります。
現在は線引き派→ふせん派に
ふせん派になった理由
線引き読書をした筆者が感じたデメリットは以下のようなものでした。
- 線を引くだけで安心してしまう
- 線を引いた箇所をメモで残すべきだが、その時間が作れない
- 本が一杯になったら捨てるしかない
- 本を捨てるのに罪悪感を持ってしまう
これらはすべて、筆者が1冊1冊をまめにメモしてアウトプットしていれば解消される問題でした。
しかし、メモを残せない自分はダメだ、そうして本をむざむざ捨てる自分はさらにダメだ・・・と罪悪感がつのり、読書に後ろ向きになったら元も子もない、と思うようになったのです。
そのため、線を引くのはやめ、付箋をつけながら読書をすることにしました。
抜書きが必要なのは変わらない
付箋をつけながら読んだ後、付箋をつけた箇所の中からさらに重要なところをピックアップして抜書きをしています。
線を引くときと同様、付箋をつけただけでは読書から何も得られません。
あとで抜書きをする箇所は絞り込むので、気になるところはどんどん付箋をつけています。
ときには1冊40〜50箇所くらいになるので、今のところは値段を気にしないように安い付箋を使っていますが、そのうちイイ付箋に変えるかもしれません(笑)
線を引いて残しておけばよかったと思う本
かつて3色ボールペンで線を引いた本はスペースの関係で徐々に処分をしてしまいました。
しかし、名作といわれる小説は、自分が興味を持って引いた緑色の線を数年後にも見られるよう、処分せずにとっておけばよかったと思います。
筆者が特に残しておけばよかったと思う本2冊を紹介します。
カラマーゾフの兄弟
カラマーゾフ家の暴君の父親が何者かに殺された事件と、三人の息子と周囲の人々の思惑を絡めて描かれる長編のストーリーです。
(TBSで翻案ドラマ化もされていました。父親が吉田鋼太郎さん、直情的な長男ドミートリイが斎藤工さん、インテリの次男イワンが市原隼人さん、純真な三男アリョーシャが林遷都さんという配役でした。吉田さんのキレキレのクズ父親っぷりが素晴らしいです。)
キリスト教信仰・哲学に関わる内容で難解ですが、犯人探しのミステリ仕立てなので、分からないなりに最後まで読まされました。今読んでも難しいことは変わりないでしょう。
しかし思い起こされるのは、神に猜疑的な次男イワンと、敬虔な修道士の三男アリョーシャが対話する場面です。
自分が若いときはイワンになんとなく共感し、超然としているように思えるアリョーシャが全く理解できませんでした。
イワンのような絶望感にいちいち浸らなくなった今の自分ですが、かつて線を引いたところを見てどう感じるのか、再読してみたいと思うのです。
存在の耐えられない軽さ
チェコの「プラハの春」の時代を背景に描かれる恋愛小説です。
トマーシュとテレザはお互いに惹かれあっていますが、性格や習慣は相反するものがあり、しばしば傷つけ合います。
世間一般の幸せな恋愛ではなく、展開もどんどん悲しくなっていくのですが、なぜかこの二人の関係には魅力がありました。
歴史、老い、死と重なり合いながら描かれるトマーシュとテレザの関係は、自分の年代が上がるごとに読み返してみたいものだと感じます。
10年前の自分の疑問に、10年人生を重ねた自分は何か答えられるのか、緑色の線をたどれるように残しておけばよかった本です。
線引き読書の感想まとめ
・線を引いただけで満足しないように、読書メモやノートを
・本を捨てるのが気になる人はふせん読書のほうがおすすめ
・古典、名作は「3色ボールペン」で線を引いて保管したい
線引き読書は本が汚れることになるので、本棚に入らなくなったら本を捨てるしかないというデメリットが難点です。
しかし、線を引いた本は、読み返すことで自分だけの発想や思い出が詰まった成長日記に変化していく可能性を持っています。
例えば1年に1冊、名作といわれる本を3色ボールペンで線を引いて、本棚に残していくのはどうでしょう。
自分の年表のような本棚ができて楽しそうだと思いませんか?